大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和40年(ネ)2211号 判決

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、原判決を取消す。被控訴人等の請求はいずれもこれを棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人等の負担とする、との判決を求め、被控訴人間川美津江代理人は控訴棄却の判決を求めた、なお被控訴人間川知次は本件口頭弁論期日において何等の陳述をなさず、相手方代理人の原審における口頭弁論の結果を陳述したところによれば次に記述するとおりである。

当事者双方の事実上の主張竝びに証拠の提出、費用、認否は次の点を附加するほか原判決事実摘示(但し原判決書三枚表十一行目中「山田」とあるを「小田」と訂正)と同一であるからここにこれを引用する。

(控訴人の主張)

一、本案前の主張

被控訴人間川知次は本件第一審係属中の昭和三十七年九月十日訴の取下をなし控訴人は同年九月十一日付書面を以て右取下に同意したもので控訴人は当審においても訴の取下の主張を維持するものである。

二、本案の主張

控訴人は、原審において控訴人の本件土地の所有権取得の原因たる事実を述べたが、仮に右事実が認められないとしても、被控訴人知次が五万円を訴外亡間川美津が二万円を夫々出捐して右両名で本件土地を買受け即日右両名から贈与を受けたものである、との主張を附加する。

(被控訴人美津江の主張)

一、控訴人は原審において本件土地の買主は被控訴人両名であるとの事実を認めながら当審においてこれと異なる陳述をするのは自白の撤回となるから右撤回には異議がある。その自白を援用する。

一、控訴人の右主張が自白の撤回とならないとすれば右主張事実はこれを否認する。尤も本件土地の買受資金は亡美津が半額を被控訴人等のため出捐してくれたが残り半額は被控訴人等の生活費から支出したもので、買主は被控訴人両名である。

(証拠関係)(省略)

理由

被控訴人間川知次は本訴が原審に係属中の昭和三十七年九月十日訴の取下をなし控訴人がこれに同意していることは本件記録によつてこれを認めることができるが、右被控訴人は本件土地は同人及び被控訴人美津江の両名の所有に属するものとして美津江と共同原告となり本件土地の所有権確認竝びにその所有権移転登記手続を求めるものであるところ共有物の所有権は共有者全員に属するを以てその所有権(持分に非ず)確認並びにその所有権に基く登記手続を求める給付の訴は各共有者単独で取下をなすことができないと謂うべきであるから右被控訴人のした訴の取下は無効である。従つて控訴人の本案前の主張は採用するを得ない。

そこで本案につき判断するに当裁判所も被控訴人等の本訴請求を正当として認容すべきものとなすもので当審における新たな資料及び主張に対し次の(一)ないし(三)の点を附加するほか原判決理由中において説示するところと同一であるからここに右記載を引用する。

(一)、当審における被控訴人間川美津江本人尋問の結果は被控訴人等の主張事実を一層確かめるものであり、これに反する当審における控訴人竝びに被控訴人間川知次の各本人尋問の結果は前顕挙示の各証拠に照し措信し難く、新たに提出された乙号各証によつて控訴人が本件土地の固定資産税等を納付したことは認められるがそのことによつては前示認定を妨げる事由となし難い。

(二)、控訴人は当審において自己に所有権が存することの理由として被控訴人知次及び訴外亡美津から贈与を受けたる旨主張するに対し被控訴人美津江は右主張は自白の撤回であるというけれども、控訴人の主張するところは、第一に、本件土地売買交渉に当つたのは被控訴人等であるが、控訴人のために控訴人を代理して買受けたものであり、仮に被控訴人等が買主であつたとすれば、買受け当日、控訴人に贈与したものであるし、以上の主張が理由ないとすれば、売買の衝に当つたものは上述の如く被控訴人等であるが、買受代金の醵出者は、被控訴人知次と訴外亡美津であるから本件土地は右両名が買主であり、その両名が控訴人に贈与したというのであるから、何等自白を取消したことにならないのである。

(三)、そこで控訴人の右知次、美津両名より贈与を受けたとの主張について判断するに原審竝びに当審における被控訴人知次本人尋問の結果は右事実に副うが如き供述部分もあるが原審(第一、二回)竝びに当審における被控訴人美津江本人尋問の結果に対比して措信し難く他にこれを認めるに足る証拠はない。

以上のとおりであるから本件控訴は理由がないので民事訴訟法第三百八十四条第一項によりこれを棄却し、訴訟費用の負担につき同法第八十九条第九十五条を適用して主文のとおり判決する。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例